ショーツとストッキングは、まとめて膝下あたりまで下ろされ、その上にのしかかられて動けない。
 身じろぎするけど陸にあげられた魚みたいな状態だ。あんまり暴れるとベッドがきしむ音がする。
 キャミソールとスカートは、お腹の上まで捲れあがっていた。
 明るい光の下でむき出しにされた下半身が見える。少女趣味な下着とは、裏腹に恥丘の繁みがさらなる羞恥を煽った。

「ふっあ、……ああ……っ、やだ」
 意味のない声が漏れる。
 顔が燃えるように熱い。
 本気で暴れたら逃げられる状況だけど、そんなことをして織部くんを拒否していると思われたくない。
 ……違う。そうじゃない。
 それは、自分へのエクスキューズだ。
 乱暴にされているのに、少しも嫌ではない。
 むしろ強引に奪ってほしかった。
 あまりの恥ずかしさに大腿をよじって隠そうとするけど、擦り合わせた内腿がぬめっているのに気づく。。
 まだ何もされていないのに、滴りそうなほどにそこは潤んでいる。
 以前に夜道で織部くんにされたことを思い出してしまう。
 あの時みたいに、触ってほしい。そんな自分の想いにいっそう恥ずかしくなった。

「そんな顔をするな……」
 乱暴にのしかかっているくせに、どこか優しい声。片手でわたしの両腕を押さえつけながら、別の手ではわたしの顔に張りついた髪を梳いてくれる。
 そうされて、ようやく自分が汗をびっしょりかいていることに気がついた。
 ああ、やっぱりいつもの織部くんだ。
 意地悪ばっかり言うくせに、どこかでちゃんと甘やかせてくれる。
 縛られたままの手を伸ばすけど、このままじゃあなたを抱きしめることさえできない。
「いやか。こんなふうにされるのは」
 ほんのちょっとだけ、織部くんの顔が赤い気がする。
 わたしは夢中でかぶりを振った。



「明るいところで優衣を見るのは初めてだな」
「……え?」
 わたしの顔なんて、いつも見てるのに?
 そう言いかけたものの、すぐに織部くんの言葉の意味と自分の考えていたことが違っていたらしい。
 呆けていたわたしから少し離れて、両膝の裏へ手を差し込む。
 縛られたままの両手であわてて、隠そうとしたけどそれどころではなかった。
 彼は、両膝を胸にくっつくほど抱えあげたのだ。
 小学生のころにやったマット運動の後転を、回りきらずに途中で止められている状態。
 なんなの。この拷問的扱い!!!
「嘘。やだ、やっ!」
 手足をばたつかせても完全に押さえこまれてしまっている。
 恥ずかしいというのを通り越して、脳天から爆発しそう。
 膝はショーツとストッキングで拘束されていて広がらないが、いちばん隠したい部分だけがむき出しになっている。



「やぁっ……放してっ!」
「俺には見せてくれるんだろう?」
 ふっと鼻先で笑う気配があった。
 そ、そんなとこで喋ったら、息がかかって……。
「あ……ぅん」
 思わず変な声が出た。
 もうやだ。やだ。死にたい。恥ずかしすぎて死んじゃう。
 目を固くつむって、唇をかみしめた。このまま息を止めたら窒息死できるかも……なんて馬鹿な考えが頭の中でぐるぐる回っている。
 残念ながら、いくら息を止めてみたところで長くはもたない。
 必死で足掻くと、内腿のあたりに唇の感触がきた。
 ぞくぞくって……背筋に、身体全部に、指先に痺れが走る。
 血が流れる音が頭の中に響く。
 まるでビロードみたいな舌が腿の付け根から、ゆっくりと中心へ辿る。
 何してるんですか。そんなとこ!
「やだ。やだぁ……あ!」
 恥ずかしい。恥ずかしすぎる。強張った背中に変な力が入って、すごく痛い。
 いちばん大好きな人に、いちばん見られたくないところを見られている。
「い、ゃ……あぁっ、あぅう……」
 まるで意味のない言葉が自分の口から洩れる。

「いや?」
 笑いを含んだ彼の声と一緒に、敏感な部分を触れられた。
 まるで羽毛が触れるような、あるかなしかの刺激。
 ただそれだけのことに腰がびくんと動く。
「やぁ……だ。おり、べくん……ひどい」
「まだ何もしていないぞ。それとも、じらされるのがいやなのか」
「ち、ちが……っ」
 つんと鼻の奥と目が熱くなってきて、じわっと涙がこみ上げてくる。
 この前の時とは、あきらかに状況が違い過ぎる。
 確かに見て……とは言ったけど、これは人類としてあり得ない恰好だ。
 人間の尊厳というものをもうちょっと大切にするべきじゃないのか。
 とか、なんとか抗弁したかったのだけど、いきなり熱い柔らかなものが押し付けられて、わたしは悲鳴だか呻きだか判断のしようのない声をあげていた。
 もう尊厳どころじゃない。
 今のわたしは原生動物並みだ。

inserted by FC2 system