「お、おり、織部く……だ、め」
「そうじゃないだろう」
 小さな耳の縁に舌を這わせながら俺は言った。
「稜だ」
 何度、言っても優衣は恥ずかしがって俺の名前を呼ばない。
 今なら、呼ぶかもしれなかった。
 もっとも、嫌われてしまう可能性も否めないので、俺はかなり危険な賭けをしている。
「あ……」
 赤く火照る顔をあげて、彼女は俺を見上げた。
「呼べないのか」
 弱々しい彼女の視線を受け止めて、俺は睨みつけてやった。
 叱られたと思ったのか、優衣の唇がわなないて、また目の縁にじわっと涙の珠が盛りあがってくる。
 潤んだ眸で見つめられると、もうたまらなかった。
 眩暈がするほど、惹かれていく。
 血がこめかみで脈打つのが判るほど動揺している。
 わななかせる濡れた唇が婀娜めいて俺は、夢中でくちづけた。
 舌を絡めると、優衣もぎこちなく俺についてくる。
 唾液を交換し角度を変えながら、さらに深く深く彼女を貪った。優衣の唇も唾液も、すべてが甘い。

「ちゃんと言えないなら、もっと恥ずかしいことをするぞ」
「え……」
 彼女が怯えて逃げ出す隙を与えないように、俺は強く抱きしめながら、足の間から下着を膝下まで降ろしてやった。
 裾の短いスカートだから簡単だったが、我ながらすばやい行動。ほとんど痴漢だな。俺……。
「やっ!」
 さすがに優衣も冷静さを取り戻したのか。あわてて俺から離れて下着を戻そうとする。
 だが、俺だってそんなに甘くはない。
 後ろを向いて前かがみになったところを背後から抱きかかえた。そのまま彼女の身体を持ち上げる。
 思っていた通り軽い。優衣の抵抗などないも同じだ。



 子供みたいにバタバタさせる足から、手早く小さな布きれを抜き取る。ちょろい。
 これで優衣の下半身を守るものは、短いスカート一枚になったわけだ。
「ひどい!」
 泣きべそで優衣は、取り返そうとするが、俺は彼女の手が届かないように白いレースのショーツを後ろポケットに押し込んだ。
 むき出しのままの乳房をこね回してやると、仔犬みたいな声をあげる。
 夜目にさえ白い胸は、俺の手の中で柔らかく押しつぶされながらもまだ手に余った。
 その中心で、小さな尖りが硬くそそり立つ。
「やぁ……こんな……」
 優衣がむずがる子供みたいに、俺の胸に頭をもたせかけて泣く。
 恥ずかしい……と小さく呟くが、口でいやがっているほどの抵抗はない。
「そうだろうな。普通は隠すところだけが丸見えになっているんだから」
 背後から抱きすくめながら、スカートの裾をめくってやる。
 覆うもののなくなったそこは、髪と同じ色の柔らかい毛がふっくらとした丘の上に萌えていた。
 それでもまだ足りなくて、俺は外灯のあるほうへ優衣の身体をむけさせる。
 逃がさないようにウエストをしっかりと抱いて、乳首を引っ張るようにつまんで明かりの下でじっくりと検分した。
 淡いピンク色をした乳輪の中央で、わずかに色を濃くした乳頭は俺の手の中で芯を持っている。
 潰すようにつねってやると、優衣はたまらない声をあげた。

「声がでかいぞ」
 俺の言葉に、優衣の身体がこわばる。
「……だ、だって……」
 優衣はがたがたと震えだした。
 宥めるようにそっと柔毛の上から撫でてやりながら、指を這わす。
 だが、今度はごまかしきれなかった。
 もう少しでもっと深い場所に手が届きそうというところで、泣きのスイッチが入ったらしい。

「や、だよぉ……ふえっ……えっ……織部く……ん」
 やば。やりすぎた。
 あせって手を離すが、もう遅かった。
 優衣は、子供みたいに声を放って泣き出したのだ。
「ぐすっ……えっ、えぐ……ふえ」
「優衣」
 俺はポケットからハンカチを出すと、涙と鼻水にまみれた彼女の顔を拭いてやった。
 ここまで泣かせたのは自分の責任ではあるものの、そんな子供子供した年上の彼女もまた愛おしく思えた。
 最初のうちは、いやいやするように顔を隠して抵抗していたが、俺が髪を撫でたり、背中をぽんぽんと叩いてやったりすると、やがておとなしくなる。
 スカートは裾が落ちて下半身は隠れているものの、胸はいい加減に直したブラウスの薄い生地を通して、立ちあがったままの乳首が透けて見えていた。
 いやがる優衣の手をどけさせて、下着の位置を整える。どさくさにまぎれて、乳首を指先で弾いてやったら優衣は猫みたいな声をあげた。
 やばい。からかうつもりがこれ以上やっていたら、本当にガマンできなくなりそうだ。あわててブラウスのボタンを上から順番に留めなおしてやる。
 その間も優衣は、べそべそと泣きじゃくりながら、されるがままになっていた。
 こいつ……本当に子供だな。
 いや、いくら恋人でも路上でこんなことされたら、普通に泣くのは当然か。
 やりたい盛りの中学生でもあるまいし、一歩間違えれば強姦罪だ。

「優衣。俺が悪かった……だから、もう泣くな」
「……泣いてなんか……ない」
 ぐすっと鼻をすすりあげて、優衣は横を向いた。
 つんとした様子がおかしかったから、俺はまた彼女の正面へ回りこんでやる。
 鼻先がぶつかりそうなほどの至近距離で、顔を合わせてやると、またぷいと顔を背けた。
「こら」
 俺は、優衣の顎をつまんで強引にこちらを向ける。
「謝っているんだから、いつまでもすねるな」
「すねてないってば」
 真っ赤な鼻の頭。涙ではれぼったくなった瞼。
 そんな顔をしていても、やっぱり彼女は可愛らしくて、どうしようもないほどいじらしくて、たまらない。胸の底が焦げるようだ。
 いつもの薄化粧をほどこして、ぱりっと仕事をしている姿もいい。
 家族と一緒にくつろいで油断している顔も可愛い。
 だが、いちばんいいのはこうして俺と二人っきりでいる時だ。
 泣いていても笑っていても、今の彼女のこんな表情をさせるのが自分だと思うとそれだけで嬉しい。

「もうしない。お前のいやがることは」
「え……」
 びっくりしたように優衣は、大きな眼をしばたたかせて、俺を見上げている。
 そんなに驚くことか。
 いや、これは俺が散々、苛めたせいだな。
 少し反省しながら、彼女の顎をつまんだ手を伸ばして頬に触れた。
 ぷにぷにとした柔らかい感触。
 思わずしゃぶりつきたくなるほど可愛い。……いや。これがいかんのか。
「俺は優衣が好きなんだ……だから、もう」
 言い終わる前に、突然、優衣が俺の首に抱きついてきた。

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