「いいじゃない。杏珠はイタイ方が好きなんだもの。ほら……太ももまで溢れてる。好きなのねぇ」
「違う。黙れ、このヘビ女。お前のはSМモドキに感じるものか。俺の手に応えてくれてるんだよ」
「うるさいわね。トリ頭は黙ってなさいよ」
 言い争いながらも弟妹たちは、呼吸を合わせたように杏珠の身体を責める。
 迦陵が鼠蹊部から、指を滑らせるように花弁を撫でると、衣蕗は、掌で背中を撫でおろし尻たぶを押し広げた。

「ねえ……どうやって愛し合ったの。下のオクチは使えないのは残念だったわね。もしかして、こっちを使ったのかしら」
 後ろの窄まりを指でつつかれて杏珠は、悲鳴をあげた。
「止めて、止めて……そんなとこ!」
 イリアに触れられたところだった。
 前と後ろを同時に攻められて、心も体もバラバラにされてしまった瞬間を思い出して、杏珠は戦慄する。
「いやっ、いや!」
「だって、すごい大洪水だもの。こっちの方まで濡らさないで入っちゃいそう」
 背後で、面白がる衣蕗の声がする。
 性交のためでも、欲情からでもなく、単純に意のままになる玩具を見つけた歓びだけが、衣蕗の声にあった。
「前が使えないから、こっちでやっちゃったのかなぁ。前も後ろも物欲しげに、涎を垂らしてヒクヒクさせてるわ。いやらしいメス豚ね」
「い、いい加減にしてっ!!!」
 両手を押さえこまれていなければ、衣蕗をひっぱたいて、その口を閉じさせたかった。
 それができないなら、自分の耳を塞ぎたかった。
 衣蕗は、猥雑な言葉を選んで杏珠に投げつけた。まるで汚泥をぶつけるように。

「だって、杏珠が望まなければ“誰も”手が出せないのよ。お姉ちゃんが“そうしてほしい”って望んだからよ」
「嘘よ」
 必死で頭かぶりを振った。
 それだけが、今の自分にできる抵抗だった。

「だって、杏珠ちゃんが本気で拒絶してないんだもん。そうじゃない? あたしたちを、本気で殺そうなんて、思ってないでしょ? 許さない……なんて、馬っ鹿みたい」
「そうだよ。杏珠は、俺がこうすることを許しているんだ。だから、かまわないんだろう?」
「何を!」
「ほら、ここもすっかり剥けて触って欲しそうだね。少しだけ、あげるよ」
 それまでは、花弁をくつろげるようにして、入口を触っているだけだった迦陵の指先がぐっと押し入ってくる。
「……だ、だめ……嫌だ! はう、ぁくっ……」
「愛してるんだよ。気の遠くなるほど昔から……どれほど杏珠に、こうして触れたかったか」
 乱暴なだけだった男の手が優しい愛撫に変わる。
 濡れた舌が、耳朶を舐めまわす。
 迦陵のそれは、不自然なほどに長く、尖っていた。耳の奥までねじ込まれる。舌先がこね回すように動く。
 頭の中に、舐られる水音が響いてくる。歯を食いしばって耐えなければ、気が遠くなりそうだった。
「……いや、やだぁ……あっ……あぁ」
 矜持も何もかもを踏みにじられ弄ばれる。
 理由さえ判らない。



 迦陵は、下半身を押し付けてくる。
 指だけではなく硬いものが足の間に押し込まれた。その形や大きさまでもが、はっきりと判った。痙攣するようにピクピクと動いている。
 どうにでもなれと、捨て鉢になりかけたはずなのに、胸の奥で渦巻く恐怖と嫌悪に杏珠は、夢中でもがく。
「止めて……止めて! いやっ、やぁ!!」
「可愛い俺の杏珠……でも、俺ももう、ガマンできそうもないよ」
 閉じた大腿の間を熱いものが差し込まれて、杏珠は絶叫した。
 咽喉が裂けそうなほど、大声を上げながら、頭の奥がズキズキと痛んだ。
 歯を食いしばって耐えようとしたが、イリアの時に感じたあの衝撃は……こない。
 迦陵の熱く滾ったものは、花弁を割るようにして、肉芽を擦りあげる。
 「ああっ……いやっ!!」
 中心を突き上げることはなく、内腿に挟み込まれるようにして収まった。



「くっ……ふふふっ」
 耳鳴りの音の中に、衣蕗の笑声が聞こえる。
「残念ね。杏珠。本当は期待していたんでしょ? イヤイヤ言いながら、腰が揺れていたものね。淫乱なメス犬。本当に馬鹿みたい……ふふっ」
 迦陵の腰は、律動を止めない。
 血管の浮いた肉塊が、濡れそぼった襞を割り開くように擦りあげる。
「あっ……あぁ……あ!」
 のけぞって、声をあげる杏珠の咽喉を迦陵の唇が這う。手は、乳房を揉みしだく。
 別の細い指が、また臀部の窄まりに戻ってきた。
 前から溢れてくる愛液をすくって、塗りこめる。しばらく指先でほじるように動かしてから、後ろから囁かれる。

「前は、ダメだけど……こっちはイイわよね?」
「だ、だめ。……いやっ!」
「杏珠のダメは、イイってことでしょ?」
「よせ、衣蕗。無理をさせるな」
 迦陵の制止をきかず衣蕗は、指を挿入する。
 空気を含んだ異様な音がして、杏珠は目を見開いた。
「……ぁくっ!」
 肛門に異物が入ってくる違和感に杏珠は、身体をこわばらせる。
 夢中で目の前の迦陵にしがみつくしかできない。
「あぁっ! あぁぁっ、ひ……あ!!」
「杏珠……そんな声出されたら、もう、俺も……」
 切羽詰まった迦陵の様子も、後ろを攻める衣蕗のことも、もう何もかもが判らなくなっていた。
 身体中の感覚が、ある場所に集まっていくような気がした。
 迦陵の腰が深く押し付けられて、膨張する。
 薄い表皮の向こうから血液のドッドッと流れる音が、はっきりと感じた。
 陰唇をずるりと擦りあげられる。
 燃えるような熱さが、身体の前と後ろを同時に襲い、このまま焼け爛れて、崩れてしまう。
 もう足の力が入らない。
 腰が、足が、がくがくと震え、もう立っていることができなかった。
 熱い湯のようなものが放出されるのを感じた。
 生臭い粘つく体液が大腿を伝う。浴室の中いっぱいに臭いがこもった。
 力の抜けた身体を、前後から抱きしめられる。

「かわいそうな……愚かな……アンジュ」
 笑いを含んだ声が、衣蕗のものだったのか。
 あるいは、迦陵だったのかは、もう判らない。
 ただ、ひどく疲れていた。
 このまま、冷たい床の上に倒れ込みたいほど。



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