肩を震わせてしゃくりあげる杏珠を扱いかねたのか。迦陵は動かなかった。
 泣きじゃくる杏珠を後ろから抱きしめたまま、そっと囁く。
「風呂に入ろう。かわいそうに寒いだろう。こんなに震えて」
 雨に濡れて帰ってきたばかりだ。
 すぐにでも、湯船に浸かりたくて、風呂場に飛び込んでしまったせいで、この事態となった。寒くないわけがない。
 誰のせいだと思っているんだ。

「ひとりで入るわよ。出てって!」
「そんな生意気言うなら、このまま犯しちゃうぞ?」
 迦陵は後ろから、硬いものを押しつけてくる。声は笑っているが、その硬質な感触が冗談ではないことを物語っている。
 身体を強張らせて杏珠は息を呑んだ。
「何、震えてんの。俺のなんか、子供のころよく見てたじゃん」
 そっちこそ、何を言ってるんだ。
 今さらカマトトぶるつもりはないが、鎌首をもたげた蛇のほうが、まだ可愛げがある。これは、もはやエイリアンだ。
 ときおり、ぴくぴくと痙攣するように動く。大腿に押しつけられて感触が、はっきりと伝わってくる。
 子供のころに一緒にお風呂で見たのは 可愛いモノだった。例えるなら“焼きたらこ”……それがどうして、こんな不気味な宇宙外生物になったのだろう。
 これまでに男性経験はあっても、露骨に見るものではなかった。
 イリアにされた異常な行為も生まれて初めてのことだ。
 そのイリアのものでさえ、まともに見たことはなかった。もっとも彼は、いつもキャソックを脱がないのだが。

 後ろから、迦陵の吐息が耳もとに吹き込まれる。
「俺のも見たんだから、今度は杏珠ちゃんも見せてよ」
 背後から抱きしめられた手が身体の中心から、大腿のあたりへと撫でおろしながら、ショーツを引きずりおろそうとする。
 それを必死に阻止しようと、ウエスト部分をしっかりと握った。
「み、見たくて、見たんじゃないっ!!」
「裸で飛び込んできたのそっちじゃん」
「だ、だ、だから、そ、それは事故……って、何をしようとしてんのよ」
「何って、そりゃ杏珠ちゃんのぐちょぐちょになったオ」
「なぁっ、うわあっ、わわっ!!」
 それ以上言わせまいとして、あわてて大声をあげた。
 信じられない。この馬鹿!
 普段は、猥語など言ったこともないくせに……人畜無害な顔で姉を騙していたのか。
 どうやって逃げよう。今、考えるのはそれだけだ。
 上半身は、喉もとから左腕を回されて動けない。自由になるのは足元だけだが、その大腿を右手でまさぐられている。
 思いっきり向う脛を蹴飛ばしてやろうと、足を後ろに振りあげた途端、利き足をつかまれた。
「嬉しいな。そんな恰好見せてくれるの」
 からかうような迦陵の声。何をするつもりなのか。
「は、放してよっ!!」
 ほとんど金切声で杏珠は、怒鳴った。
 右足をひざ裏から抱えられ、もう片方はそのまま下ろしたままという不安定な体勢。下ろした足もほとんど爪先立ちだ。
 迦陵が背後から抱き上げている恰好で、かろうじて立っている。
 いわゆるY字バランスに近い姿。
 無理やり右足をあげられているから、股関節が痛い。
 おまけに、普段は閉じられた場所が開ききってしてしまう。
 必死で、足を閉じようともがくが、迦陵の力は強い。
 アンバランスなこの状態で人ひとり抱えているというのに、どんなに暴れてもびくともしないのだ。
 ひざ裏から腕を差し入れたまま、大腿から中心へと手を這わす。

「い、いや……いや……いや!」
 夢中で首を振るがまるで聞き入れられることもない。迦陵の荒い吐息が耳もとにかかる。
 ショーツのクロッチ部分から、ふたたび秘裂へと指が戻ってくる。
「や、やだ!!」
 がくがくと足が震えた。
 かまうことなく迦陵の指がザクロを割るように花弁を開く。
 同時にイリアよりもずっと細い指が侵略を開始する。
 入口を緩やかに擦られた。ぬめった水の音がはっきりと聞こえる。
「うわぁ……すげっ、トロトロになってる。もう俺、杏珠ちゃんの“いや”っての、信じないよ」
「やっ、違う……本当にいやだってば……止めてよ。もう、いや……やぁ……っ!」
 杏珠の啜り泣く声が、狭い浴室に響く。
「そんなに言うなら、鏡見てごらん。杏珠ちゃんの言うことが嘘だって判るから」
 迦陵の言葉に誘われるように、顔をあげた。
 涙で、眼の前が歪んで見える。
 だが壁面の等身大の鏡だけは、いつもは蒸気で曇って見えないのに今日に限っては、はっきりとふたりの裸体を映している。
 浴室のドアを開けっ放しにしているせいだ。
 はしたなく片足を持ち上げられて、身体の中心を男の手で開かられている素っ裸の女がいた。
 濡れた髪が顔に張り付き、化粧は雨でほとんど落ちてしまっている。
 背後から胸をそらすように羽交い絞めにされているせいで、張りつめた先端が固く尖って上を向いていた。
 そして、よく見えるようにと斜めの角度に向けられた足の付け根。
 ショーツを履いたまま、クロッチ部分が片方に寄せられ露わになった秘所。まるで内臓の一部がめくれて見えているかのような裂け目を指で押し広げられる。

「あぅ!」
 敏感な部分に指先があたり、顎をのけぞらすようにして呻いた。
 くちゅっ……淫靡な水音とともに、二枚の貝が開かれる。
「中も、こんなに奇麗な色をしているんだな」
 広げられた場所が、すうすうして……守るものもなく外気があたる感じが、より不安を誘う。



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